最近暑くなってきたので、漂鳥のヒヨドリは平地から山地へ住みかを移したようで、姿を見かけなくなった。
いじめっこのヒヨドリがいなくなったことで、スズメが再び姿を現すようになった。
ヒヨドリには芸を仕込んだが、スズメもなついて手から直接パンを受け取るようになった。
パンを差し出すと焦って指をくわえていこうとすることがある。そういうとき、こちらが「あの、ちょっとやめてくださる?」という気持ちでいると、スズメはこちらを不思議そうに眺めるが、次からは丁寧に取っていく。
動物は言葉を持たないから複雑なことは伝わらないけど、「痛い」とか「腹立つ」というレベルは伝わっているのではないかと思う。
食べ物は、何を口にするかよりも、どれだけ体に吸収されたか、どれだけ健康に役立ったかの方が肝心だ。
知識も、何を学んだかよりも、どれだけ身についたか、どれだけ生活の中に役立てたかの方が重要だ。
「ヨーロッパには行くな。」という先生の言葉を聞いたとき、真っ先にギリシャ危機が思い浮かんだ。
新聞の紙面を賑わしているギリシャは今、破綻の危機にある。
ユーロ圏諸国とIMFが支援を表明しているものの、問題を抱えているのがギリシャだけではないので、この先どうなるかわからない。
PIIGSと呼ばれるポルトガル、スペイン、アイルランド、イタリアに問題が飛び火する可能性が指摘されている。
先生がおっしゃったこととヨーロッパ経済は関係無いかもしれないが、話を聞いた瞬間ギリシャ危機が頭に浮かんだことも事実だ。
ヨーロッパが財政難に陥るようであれば、いずれはアメリカ、そして世界一の財政赤字を抱える日本にも、さらなる困難な状況が訪れることも考えられる。
公園で昼食をすませることが多いため、それを知っているヒヨドリが滑り台に止まってパンを待っている。
彼は最近、空中キャッチを覚えて、投げたパンが地面に着く前にくわえる。
ヒヨドリはペットとして飼われることもあるくらい良くなつく鳥だそうで、飼い主を覚えられるほど頭も良いらしいから、私のことは配給のおじさんぐらいには思っているかもしれない。
しかし寂しいのは、公園にヒヨドリしか来なくなったことだ。
以前はスズメやハト、ハクセキレイも来ていたが、攻撃的なヒヨドリが追い散らすので来なくなった。
芸を覚えた嬉しさの反面、寂しさが残る。
まだ寒かったころ、昼休みに公園でパンをかじっていたら、スズメが寄って来た。
冬は鳥にとって飢饉の時だろうと思って、パンをあげた。
こうして配給をしていると、ハトやハクセキレイ、ヒヨドリもやってくる。
鳥害が心配だったが面白いので続けているうち、鳥の習性が見えてきた。
スズメは仲間やひなを連れてやってきて、仲間同士でケンカしたりひなに分けたりしながら賑やかに食べる。
ハトは人の足元をうろうろしてパンを要求する。
大食いでコッペパン4分の1くらい食べる。
ハクセキレイは臆病で、遠くからこちらを伺いながら地面をつついている。
パンを固く潰して遠くへ投げると食べる。
ヒヨドリは木の上に止まっていて、スズメにパンを投げると滑空してきて横取りする。
しかもそのあとスズメを追いかけ回す。
可愛らしい見た目からは想像できない。
最後にカラス。
高らかに鳴きながら上空を飛んでいく。
「配給?俺には人間が捨てたゴミがあるさ。」と言わんばかり。